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2025.12.18
大地と、ジェフリー・バワと三位一体 ホテル『ヘリタンス カンダラマ』への誘い
海外旅行
スリランカの宝、ジェフリー・バワ(1919年7月23日~2003年5月27日没)。「熱帯建築家」と呼ばれ世界中のアーキテクツやホテルファンを今なお、魅了し続ける存在。アーユルヴェーダと並んでスリランカを旅する理由にもなっています。
世界に名を馳せる隈研吾氏やアマンリゾーツの創業者であるエイドリアン・ゼッカ氏といった建築家やホテリアーを心酔させてしまった「トロピカル・モダニズム」の先駆者。実は「インフィニティ・プール」の発案し建造した人物でもあり、今日のホテル文化に影響を与え続けているのがジェフリー・バワなのです。
ヘリタンス カンダラマでジェフリー・バワを感じる

その代表作のひとつに数えられるのが『ヘリタンス カンダラマ』。コロンボ空港からは車で約4時間。名称の「カンダラマ」は地名で、スリランカ中部にある村。場所はカンダラマ湖(貯水池)のほとりに位置し、世界遺産の「シギリヤロック」や「ダンブッラの黄金寺院」もあるエリアです。
さらにアヌラーダプラ、ポロンナルワ、キャンディの3都市を結び、古代遺跡が集中する地域「文化三角地帯」にも隣接するため、“初めてのスリランカ旅の地”や“初めてのジェフリー・バワのホテル”に選ばれています。

バワの聖地のひとつで、滞在にふさわしいホテルとして選ばれる『ヘリタンス カンダラマ』は、私たちの想像を上回る密林のなかにあり岩山の上に建っています。
着工は1991年、開業は1994年。1980年代のスリランカは北部と東部の内戦が続いた時代。そして、1991年は隣国インドの第9代首相、ラジーヴ・ラトナ・ガンディーが暗殺されるなどスリランカにとっても悩ましい時期にありました。とはいえ、すでに建築家として脂が乗ったバワは精力的に活動。国内だけにとどまらずインドネシア、フィジー他でプロジェクトを展開しています。『ヘリタンス カンダラマ』の着工当時は、危うい世情が小康状態にあった時期でした。

『ヘリタンス カンダラマ』の建築にあたっては、バワは目を付けていたこの地をヘリコプターに乗って視察。その後、すでに身体に不自由があった彼でしたが神輿を作って尾根に出かけるなど情熱を傾けたといいます。
さて、バワの建築様式を語るにおいて、切っても切り離せないのが、内と外の仕切りがない「シームレス」。とくに『ヘリタンス カンダラマ』は、ジャングルに突き出した岩山と一体化し、稀有な存在感があります。雨季の密林は殊の外生い茂り、靄に覆われて全景を見渡すことが難しいものですが、洞窟のようなエントランスに足を一歩踏み入れた途端、その一端を感じることができます。

このホテルを支える基礎であり象徴である岩々はむき出しで無造作ではありますが唯一無二の表情を持つアート。バワ作品のなかでも、最も強く自然と結びついたホテルとの出逢いになります。

バワがこの世を去った後も、ホテルは密林のなかで呼吸を繰り返し、育っているのを実感できるのが『ヘリタンス カンダラマ』の特徴のひとつでもあります。
たどりつくのはジャングルのなかの至宝

客室数は152室。大きく翼を広げたような形で、シギリヤウィングとダンブッラウイングの2棟からなります。ホテル内にはチーム・ジェフリー・バワに欠かせない彫刻家のラキ・サナナヤキやろうけつ染め作家のエナ・デ・シルバの作品が飾られ、ミュージアムのような趣き。ホテル内を散策すればバワを始めとするアーティストの軌跡をたどることができます。

開業から今年で31年(2025年11月現在)。今やジャングルの一部になった『ヘリタンス カンダラマ』の滞在の意義とはなんでしょうか。まず、ここは外(外観)ではなく、中から見るホテルであること。回廊は窓枠だけで断壁に寄り添い、地球のうねりが感じられます。そこかしこに姿を現す猿やリスたちこそ、ここの住人。生命力が五感を揺さぶり、ゲストの心身を洗い流してくれます。

風が通り抜け、木々のざわめきが聴こえてくるような客室もバワならでは。雨期の生い茂って濡れた木々、朝靄もスリランカならではの風景で、絵画のようです。開業後、バワが自室として使った客室もあり、ファンならば一度は泊まってみたい聖地中の聖地です。
さらにシギリヤロックが遠くに眺められる踊り場には、今もバワの特等席が残されています。

ホテル内にはレストラン、スパ、プール他の施設があり、アクティビティも用意されていて長期の滞在にも適しています。まずは一度宿泊し、ジェフリー・バワが残したジャングルの至宝を体験してみませんか?世界の建築家が熱狂した近代ホテルの魂に触れられるはずです。
ヘリタンス カンダラマ(Heritance Kandalama)
住所 Heritance Kandalama, PO Box 11, Dambulla, Sri Lanka
電話番号 +94 66 5555 000
photos&text Satsuki Izumi
現地取材を経て執筆
参考文献:「ジェフリー・バワの全仕事」(著者 ディヴィッド・ロブソン/日本語翻訳高橋正明/グラフィック社刊)、
「IN SEARCH OF BAWA Master Architect ofSri Lanka」(著者 ディヴィッド・ロブソン/TALISMAN 刊)、
「GEOFFREY MANNING BAWA DECOLONIZING ARCHITECTURE」(著者 シャンティ・ジェイワルデネ/ナショナルトラスト刊)
Cui Cui(キュイキュイ)
株式会社日本橋夢屋 ツアー販売部